日本コンベンション研究会

 

2019/06/10

「国際観光コンベンションフォーラム 2019in札幌」開催
本年は全国から142名参加、白熱した議論とMICE情報交換の場に

当研究会は、「国際観光コンベンションフォーラム2019in札幌」(事務局:札幌国際プラザ、コンベンション札幌ネットワーク)を、去る3月7日、8日の両日、北海道札幌市にて、2018年秋にオープンしたばかりの札幌市民交流プラザで開催しました。

「日本MICE その歩みと課題」をテーマに、今回で12回目となった国際観光コンベンションフォーラムも、日本全国より、観光・MICE分野等の研究者、自治体、観光協会、コンベンションビューロー、PCO、イベント会社、施設などMICE関連企業・団体から142名の皆様にご参加いただきました。2日間のプログラムでは、3つの特別講演、基調対談、各分科会、意見交換会、パネルディスカッション、エクスカーション、MICEサロン・ミーティングを実施しました。

また、会期中には、札幌市民交流プラザ(文化芸術劇場hitaru,、札幌市図書・情報館) 見学会の実施や、SDGs×MICE記念イベントとして、「MICE(マイス)でマイル−札幌の歴史探訪」と題した早朝チャリティー・ウォークを特別開催し、早朝の時間帯にも関わらず、こちらのプログラムにも多くの方にご参加をいただきました。

再生医療や創薬の現場で活用される折り紙技術「Origami が医療を変える」。東北大学災害科学国際研究所の柴山淳准教授による「被災現場から学ぶ防災・減災」。語り手にVISIT JAPAN 大使の川島氏を、聞き手にMICEジャパン 代表取締役社長森口氏を迎えての対談「日本MICEの歩みを振り返って」。災害時の観光・インバウンドにおける危機管理を考える「危機管理、そのときどう取り組んだか」。IR関連法案の成立を受け、その効果を議論する「MICEとIR、どう向き合う」。 「定住人口」、MICEなどの「交流人口」の拡大、そして「関係人口」の構築と、地方創生を見据えた「『人口』から地方創生を考える」。井上観光庁MICE推進担当参事官による「日本のMICE推進に向けて」。全国のMICE関係者によるパネルディスカッション「MICEの未来。誰がどう担っていくか」「MICEに求められる地域資源」など、多岐に渡り活発に議論する場となりました。

本年も、全体講演後のオプションプログラムにも大きな関心が寄せられ、エクスカーション&MICEサロン・ミーティングには73名が参加。「MICEに求められる地域資源」をテーマに、自分たちの地域ごとの特色を前面に打ち出したメニュー開発・アイディアについて、非常に活発な議論が繰り広げられました。



[1日目]
特別講演T



特別講演Tでは、「Origami が医療を変える」と題し、北海道大学 高等教育推進機構 特任准教授の繁富香織氏にご登壇いただきました。宇宙ロケットなどに使われている折り紙工学との出会いから、「血管の中に入れる医療器具、ステントなどが狭小な所へ運んで展開することを、宇宙とはスケールが違うものの医療でも出来るのではないか」と考え、そのテーマでオックスフォードで博士号を取得。再生医療の分野に折り紙工学の知識を生かし、「折り畳むことで簡単に立体を作れ、人工的な材料で、より自分たちの生体に近い材料で自分たちの体を修復・治療していく技術」を研究され、ステントグラフト治療に用いる折り紙ステントという技術を開発されました。そのほかにも、「細胞折り紙」の技術開発や、折り紙の可能性を広げるコラボレーションとして、インテリア照明やオリンピックでの観光MAPへの活用案などについて、幅広くお話いただきました。


特別講演U


特別講演Uでは、東北大学災害科学国際研究所准教授 柴山淳氏に、防災・減災について具体例を交えて講演いただきました。特にMICEにおいて重要なことは、「必要十分な防災知識をちゃんと身に着けているか」、そして「正しい情報を正確に伝えること」であり、そうすることで訪日外国人に対してすごく安心感を与えることができる点を挙げられています。また日本の災害リスクに関する2018年の統計データ(自然災害、洪水、暴風、地震に対する脆弱性のランキング)では、世界172か国中29位と、世界的に日本は災害の危険性が高いこと、一方で、防御力も172か国中164位と高いとのことでした。よくある「木に登って助かった」といったエピソードは間違った解釈で、たまたま助かっただけで、助からなかった方もいる。津波に対して垂直避難をすることが大切ですが、火災に囲まれてしまうこともあるので、時間に余裕がある時はなるべく内陸、山のほうに逃げることが重要。ほか、ヨーロッパのドイツでは地震がないなど、「地震が起きている国は全世界でも一部」ということは認識しておくべきであるなど、有益な話をご紹介いただきました。


基調対談


基調対談では、川島アソシエイツ 代表でVISIT JAPAN 大使の川島久男氏と、MICEジャパン 代表取締役社長森口巳都留氏による対談「日本MICEの歩みを振り返って」が行われました。 「日本のMICE産業はどのように変化を果たし、その変化が世界の動きに対応できているのか」という問いに対し、川島氏は3点挙げられており、1つは競合の変化・とりわけアジアの台頭について、航空、空港、配車アプリUber、ホテルなどのステークホルダーが連携しているシンガポールの事例などを紹介されました。2点目が主催者・顧客の変化で、開催地の決定要因が多様化してきたために誘致自体がだんだん難しくなってきていること、参加者の様々な要望に対応することなどを挙げています。3点目にサプライヤーの変化、コアPCOの台頭を挙げられ、日本発のコアPCOがまだいないこと、包括的・横断的なMICE組織がまだできていないものの、グローバルMICE都市の選定や日本のMICEブランディングなど、観光庁による事業取り組みが進んでいることを述べられました。また、日本のMICEの課題としては、@都市・地域の課題として、ターゲットの顧客のニーズに本当にフィットする多様なサービスを考えなくてはならないこと、A日本の都市地域の問題として、プロモーション・セールス・ビッディングの国際的なノウハウの不足、B国の課題として、経済効果調査は民間でのビジネスの実態に即したものにすることなど、各立場での課題からMICEの未来を展望していただきました。
(※MICE Japan5月号にてレポートあり)


分科会


第1分科会では、直近では、東日本大震災や北海道胆振東部地震など大きな災害が頻発する中、観光・インバウンドにとって必要な危機管理を各地域の事例から考えました。JTB総合研究所 主席研究員の太田 正隆氏がコーディネーターとなり、平成の30年間を振り返ったうえで、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震でのホテル宿泊施設としての対応・配備・受入・連携について、札幌市内ホテル連絡協議会事務局長で京王プラザホテル札幌の副総支配人である柴谷 学氏により、地震発生当時を時間ごとに追いながら詳細に振り返っていただきました。参加者からも地域での災害対応や整備状況について声が寄せられ、また特別講演で講演いただいた柴山准教授からもコメントを頂き、今後の防災ならびに危機管理対策に備え、非常に活発な意見交換が行われました。



第2分科会では、コーディネーターとして集客都市研究所 代表の小松 史郎氏、スピーカーには株式会社レイ MICE事業部 シニアチームリーダーの斎藤 大一氏に登壇いただきました。IR関連法案の成立を受け、本格的に動き出した日本。その中でのMICEの役割、MICE活性化への効果について議論しました。IR=カジノではなく、MICEのインセンティブという捉え方で国が動いていることや、MICEを知ることでカジノを受容する方向になるのではないかということ、IRにおいて成功しているシンガポールの事例などの話題が取り上げられました。現在国内でも複数の都市が施設建設に名乗りを挙げるなど、特に関心の高い話題の中、行政、コンベンションビューロー、観光協会、MICE施設その他関連企業などから多数の参加が見られました。



第3分科会では「「人口」から地方創生を考える」ということで、地方創生に向けて、移住など「定住人口」やMICEなど「交流人口」の拡大、ひいては「関係人口」の構築に意識を向けていくことを、地域の事例を取り上げながら学びました。コーディネーターとして臼井事務所 代表で北海道大学客員教授の臼井 冬彦氏と、スピーカーには元益田市の副市長で、前くにびきメッセ専務理事の中島 哲氏が登壇されました。人口減少の仕方における地域ごとの差異や、地域がMICEをやるうえで、雇用をどのように創出するか、地域におけるコンベンションビューローの認知度や、MICEという言葉の普及に向けたプロモーションの必要性など、会場含め多岐に渡って議論がなされました。


【2日目】
特別講演



2日目冒頭は、公務でご多用の中長崎フォーラムに引き続き、観光庁MICE推進担当参事官の井上 学氏にご登壇いただき、「日本のMICE推進に向けて」 をテーマに講演いただきました。講演の中では、@Change AChance BChallenge CCitizen DCreativity ECommunityという6つのCを取り上げられました。オリンピック、ラグビーワールドカップを踏まえたスポーツ国際戦略や、レガシー効果の研究調査、社会貢献(SDGs)などの変化への対応、プレMICE・ポストMICEについてなど、日本のMICEをいかにして推進していくべきか、そしてこれまでと異なるガバナンスの変化に気づき対応していくことの必要性などを挙げていただきました。


パネルディスカッション


パネルディスカッションは、コーディネーターに日本大学教授 宍戸 学 氏、パネリストにJCCB事務局長の小堀 守氏、福岡観光コンベンションビューロー マーケティングディレクターの嶋田 和泉氏、くにびきメッセ 事務局長の原 利一氏を迎え、「MICEの未来。誰がどう担っていくか」と題し、今後のMICE振興に向けてコンベンションビューロー、DMOなどの推進機関や産業界がはたすべき役割と方向性について、様々な事例を挙げ、議論が深められました。また参加者からのライブ投票や匿名での質問を受ける「sli.do」にもトライアルするなど、会場が一体となり、リアルタイムでのディスカッションが進行しました。
(※MICE Japan5月号にてレポートあり)



エクスカーション

会議終了後のエクスカーションでは、サッポロファクトリーにてジンギスカンの昼食をとり、北海道大学総合博物館 教授の大原 昌宏氏による展示物等の解説を受けながら、歴史と趣のある館内を巡りました。


MICEサロン・ミーティング


本年のMICEサロン・ミーティングは、北海道大学北キャンパスにあるFMI(Food & Medical Innovation)国際拠点にて実施しました。進行には、グロービス経営大学院 特任准教授で北海道大学 客員准教授の難波 美帆氏、話題提供に北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程後期の山ア 翔氏、NPO法人コンベンション札幌ネットワークの松野 淑恵副理事長の3名で、「MICEに求められる地域資源」をテーマに進行されました。

「音楽フェスティバルの主催者は参加者が勝手に遊べる、作りこめる余地がある環境を用意しており、この音楽フェスという新しい概念が生まれたことで、自分たちもやってみたいという人々が全国に広がり、ローカルフェスという形でたくさんの人が集まる場・地域づくりに繋がっている」という事例紹介がありました。その後、今回は9グループに分かれ「どこかの観光資源、地域資源にプラス何かを掛け合わせて新しいMICEのアイディアを作る」を目標に、参加者おのおのが自由に、既成概念にとらわれない発想で、各地域における新しいMICE地域資源のアイディアを出し合い、場所を移した発表の場面でも、意見交換が弾む中、全2日間の日程を終了しました。


次回の国際観光コンベンションフォーラムは来年春、富山県富山市で開催する予定です。 次回も、よりいっそう熱くこれからのMICEの未来を語る場となるよう、準備を進めてまいります。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

※SDGsへの取り組み

札幌は、2018年SDGs(※)未来都市の政府認定を受けました。これまでも環境に配慮したMICE推進に取り組んできましたが、「社会的価値の発信」などを求めるMICE主催者ニーズが高まっていることを受け、今回のフォーラム開催では、MICE分野におけるSDGsに向けた取り組み、プログラム開発として、SDGsへの貢献を目指した運営に取り組みました。
マイボトルの持ち込みにご協力いただいた参加者の皆様、チャリティ販売・早朝チャリティーウォークにご参加くださった皆様、フォーラムの運営趣旨へご理解、ご協力を賜りましたすべての方々に、心より御礼申し上げます。
※SDGsとは・・・国連で採択されている「持続可能な開発目標」

取り組み内容:
○全体として

・カーボンオフセット・・・簡易モデルによる会議排出CO2の積算、排出CO2の植林によるオフセット。カーボンオフセット募金−絵葉書プレゼント
・再生可能エネルギーの利用・・・会場使用電力のためのグリーン電力証書の購入
・ペーパーレス・・・看板の電子化
・印刷物の環境配慮・・・プログラムへの再生紙、ベジタブルインクの利用
・飲料関係・・・会場内サーバーの設置、 ペットボトル持込制限、マイボトル持参の促進、障がい者アートデザインのオリジナルタンブラー製作販売
・早朝チャリティウォークイベントの実施



○レセプション「SDGs×MICE in Sapporo」  「食」を柱としたSDGsに 資する地域貢献型プログラム、取り組みのショーケースとして実施。


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